第12章 本当にそうかしら
消えるドライブ、なんて大技をわざわざWCの始まるずっと前に、あのさっちゃんに教えるのは、どう考えても不自然だ。
夏の時点でこの技を習得していたかどうかは別にしても、他に新技を身に付けるつもりでいたんだわ。
わざと自分に視線を集めてミスディレクションの効果を切れさせ、自分以外の味方全員に消えるドライブと同じ効果を与える。
テツ君の本当の狙いはこれだった、というわけね。
「お前はこうなることがわかっていたような言い草だったな」
「私を誰だと思っているの?あのさっちゃんに分析力を教えたのは、この私よ」
征十郎はフッと笑いながら視線をコートに戻した。
第三クオーター、残り一分を切ったところで、誠凛は2点を決め、点差はとうとう一桁の8点。
だが、やはり桐皇4番の今吉さんは、腹黒さと性格の歪み具合は右に出るものがいない、と噂に聞くほどだ。
ブザービートで3Pを決めた。
インターバルに入った両チームのベンチでも、雰囲気の違いがここからでもわかる。
「(いくら私が教えたテーピングだとしても、『鉄心』の膝への負担は大きいわね…。やっぱり私が巻くべきだったかしら…)」
『第四クオーターを始めます』
コートに響くアナウンス。
この勝負の大一番が今、始まる。