第12章 本当にそうかしら
ただ…以前とは異なる彼の姿に、本当にここまでなのか?と首を傾げざるを得ない。
「大輝も本領発揮し始めたようだな」
征十郎は言う。
まさしくその通りだ。
これまでがお遊びであったかのように、大ちゃんの動きは凄みを増してゆく。
「テツ君を封じられたのはイタいわね。火神一人で大ちゃんを止められるなんて考えられないわ」
大ちゃんが本気を出し始めたことに加えて、さっちゃんの予測データ。
桐皇リードのまま、徐々に点差は開いていった。
そして気づけば、テツ君のマークは4番から7番へと、元に戻っていた。
テツ君のミスディレクションは完全に効果が切れてしまった。
――― 『万策は尽きた。誠凛の負けだ』
観客は勿論、『キセキの世代』を含めた全員がそう思った。
ただ一人を除いては。
「本当にそうかしら」
「?」
私が小さく呟けば、征十郎は不思議そうな顔で私を見る。
それと同時に、目下のコートでは、驚くべきことが起こっていた。
「なっ…」
「うわぁあ!決まった!!」
「いや、それより今…今吉が一歩も動けなかったぞ!?」
誠凛の5番、伊月さんが今吉さんを抜き、シュートを決めた。
「(やっぱり、まだ何か隠していたのね)」
夏休み、さっちゃんからテツ君の新技を教えてもらった、と聞いた時から違和感があった。