第12章 本当にそうかしら
それに私だって馬鹿ではない。
征十郎がそう言うことを予測した上で、私は彼らに直接手を下していない。
ただテーピングの方法を教えただけだ。
「(驚いたのは、あの誠凛の女監督が思ったより手際が良かったことくらいかしら。ま、噂には聞いてたけど)」
そう思いながら、私は試合に目を向ける。
前半同様、早い展開で進んでいく試合。
大ちゃんと火神の一対一が主立っていることは前半と同じだが、少し違うのはテツ君がいること。
「うぉぉ、入ったぁ!3P!!後半最初の得点は誠凛だ!」
「おお、誠凛が一気にノッてきたぞ!」
「そりゃそうだ。さっき決めたのは3点…逆転だよ!ついにこの試合初めて誠凛リードした…!」
ギャラリーが騒ぎ始める。
無理もない。
テツ君のパスから4番の3Pが決まり、IH準優勝のあの桐皇に逆転したのだから。
「(…だけど、ここで桐皇が…さっちゃんが黙ってるわけはないわ。絶対何かあるはずよ)」
誠凛が逆転してから、間もなくして桐皇も堅実に2点を返し、再び桐皇リードとなった。
と、その時。
桐皇の4番がテツ君のマークに付く。
「華澄、あの4番は何をしようとしていると思う」
隣の征十郎は表情を変えずに問いかける。
「桐皇の4番、今吉翔一ね。プレーは勿論だけど、あの人は心理戦に強いと聞いているわ。それに桐皇にはさっちゃんがいるのよ?どう考えてもテツ君封じに出てるわね」
「…テツヤはどう出るかな。見物だね」
征十郎が言った側から、コートでは、私の言ったようにテツ君の動きが封じられていた。
テツ君の視線誘導は、一見手立てのないように見えるが、一度タネさえわかってしまえば、そこで終了だ。