第12章 本当にそうかしら
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「随分と長いトイレだったな」
「女の子には色々あるのよ」
私が征十郎の元へ戻ると、既に後半戦は開始されていた。
「それと大輝とあの7番の動きが良くなったのは関係があるのか?」
全てお見通しの彼は、試すように私に視線を向けながら問いかけた。
「さあ、どうかしら」
今までであれば、緊張の走るであろうその流れに、私は依然としていた。
ああ、私の中で覚悟は決まっているんだわ…なんて暢気なことを考える余裕も生まれている。
そんな私の様子に、征十郎は何も表情を変えずに試合に視線を戻した。
「あら?怒っちゃったかしら?」
私は口角を上げながら問い返す。
「まさか。今更お前の身勝手な行動に驚きはしないよ。ただし…」
ゆっくりと、その瞳で私を捉えながら彼は続けた。
「次はないと思え。お前が直接手を加えるなど、言語道断だ」
「……」
普段と変わらない涼しい表情の中に、わずかな怒りが見えた。
「(これは怒ったわね。でも…)」
ここで私も引き下がるわけにはいかない。