第11章 夏の大三角形なのよ?
だけど、それは洛山を裏切ること。
マネージャーとしてとるべき行動ではないこと。
そんなことを考えている私は、洛山のジャージを羽織ってベンチに座るべきではない。
「藍川が何を考えてんのかは知らねーけど…藍川ほどマネージャーに誇りを持ってる奴はいねーよ」
「私が…?」
問い返した私に、樋口先輩は頷く。
「藍川が仕事できなくて、生意気で、嫌な奴だったら、俺は間違いなく藍川がベンチに座ることを許さない。だけど…藍川だからこそ、俺はベンチに座れなくてもいいか、って思えるんだぜ。だから、藍川は自分の思うようにやっていいんじゃねーの?藍川が『これが正しい』って思って行動したんだったら、それはきっと正しいんだと思う。だから、ベンチに座る資格がないとか言うなよ」
「樋口先輩…」
私が正しいと思うこと…。
それは、”今の”征十郎の言うこと、”今の”『キセキの世代』が間違っているということ。
「ありがとうございます」
樋口先輩の言葉に少しだけ救われたような気がした。
私がお礼を言えば、樋口先輩は笑いかけてくれる。
「お、そろそろ休憩だな」
「私、ドリンク配りますね?樋口先輩はタオルをお願いします」
「おう」
私はドリンクの籠を持って、選手たちの中へ入っていった。