第11章 夏の大三角形なのよ?
よくよく考えてみれば、バスケの名門の洛山で、わざわざマネージャーになりたいなんて思う男なんてそうそういないだろう。
「選手としてじゃないけど、初めてベンチに座った時は嬉しかったんだぜ?でも…最近思うんだ。もっと早く、藍川に出会ってれば…俺はまだ選手でいられたんじゃないか…って」
「……」
樋口先輩がどんな過程で、どの程度の怪我をしたのかはわからない。
だけど、私だったら…彼を選手に戻してあげることができたかもしれない。
「そう考えたら、黛はスゲーよな。諦めないで選手続けて、最後はそれが実を結んでさ」
「あの人も一度は辞めてますけどね」
「ハハッ、それもそうだな」
コートを走る黛さんに目を向ければ、ちょうどくしゃみをしていた。
そして、くしゃみの後は必ず「お前、噂しただろ」と私を見る。
「今更、こんなこと考えたってどうしようもねーんだけどな。だから、せめて…最後まで洛山のマネージャーとしてベンチにいたかったな…って言う本音」
そう言って、樋口先輩は私に笑いかける。
「…私なんかより、樋口先輩の方がベンチに座る資格はあると思います」
「は?」
「私は、今でも自分が何をしたらいいのか、わからなくなる時があるんです。洛山のマネージャーとして振舞うべきか、それとも、自分の目的を果たすために藍川華澄として行動すべきか…」
夏休み、修ちゃんと会った時に覚悟を決めた。
例え征十郎に嫌われようと、洛山にいられなくなろうとも、私は…昔の皆を、征十郎を取り戻す。
だから…征十郎には、負けてもらう。