第11章 夏の大三角形なのよ?
月日は流れ、あっという間に十一月。
週末には東京の方でWC予選が始まる。
「なーなー」
「何よ」
すっかり冬服に衣替えされ、その上ブレザーの下にはセーターを着込まないと寒い今日この頃。
教室では、今日提出の課題の終わっていない成美ちゃんが、必死に私の課題を写していた。
「華澄ちゃんは紅葉とか興味ないん?」
課題を写す手を休めることなく成美ちゃんは問いかける。
「ないわね」
「即答かいな!」
興味を示さない様子で頬杖をついて自分を見つめる私に、成美ちゃんはバッと顔をあげた。
勿論、時間のない彼女にそんな一瞬の猶予も許されるわけもなく、私は成美ちゃんの頭を強制的に下げさせる。
「いやな?高台寺の無料拝観券もろてんけど、うちはここド地元やさかい興味ないねん。いらん?」
再び手を動かし始めた成美ちゃんは、私をチラリとだけ見て言った。
「紅葉ねぇ…」
興味が全くない、といえば嘘になる。
全くどころか、めちゃくちゃ見に行きたい。
折角京都にいるのだから、秋の紅葉と春の桜は絶対に見ておくべきだ。