第10章 どんな顔をするのかな
今日テープを注文したとしても、ここに届くのは間違いなく三日は掛かる。
足りない分は、責任を持って私が買い出しに行かねばならない。
「俺が行くぜ?」
「いえ。私の責任ですので、私が行ってきます」
「そっか。じゃ、せめて俺のチャリ使えよ。これ鍵な」
「ありがとうございます」
樋口先輩に自転車の鍵を借りて、私は体育館を出た。
征十郎に一言言おうかと思ったが、私が練習にいようがいまいが、あの人には関係なさそうだし、樋口先輩もいるわけだし、問題はないと思って止めた。
と言うよりも、征十郎に言って長いお説教コースになるのを免れたかっただけだったのかもしれない。
駐輪場に停めてある樋口先輩の自転車を発見し、サドルを乗りやすい高さに調節して、近くのスポーツショップまで漕ぎ出した。
「…っもう!あっついわねっ」
真夏の京都。
流石は盆地、と言いたくなるほど暑い。
そんな中、私は自分の失態のせいで得意でもない自転車を漕いでいる。