第10章 どんな顔をするのかな
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その日の練習は普段通り。
…だった。
途中までは。
「まさか俺がテーピングする日が来るなんて思わなかったよ」
「長年バスケをしていれば、ガタがきてもおかしくないんです」
現在、私はコタちゃんの指と肘のテーピング中。
コタちゃんは今までテーピングをしたことはないし、この先もすることはないと思っていた、と言うが、あれだけのドリブルスキルがあるのだから、今までしてこなかった方が驚きだ。
「コタちゃんのドリブルは指と手首に負担が掛かりやすいんです。それを庇おうとすれば今みたいに肘も痛めます」
「痛くはないんだけどなー」
「今は痛くなくとも、蓄積される前に対処しないと意味がありません」
能天気に言うコタちゃんを諌めるように言えば、コタちゃんは大人しく私に右腕を預けてくれる。
「はい、できましたよ…って、あら?」
「どーしたの?」
コタちゃんのテーピングを終え、使っていたホワイトテープとキネシオロジーテープ(通称、ホワイトとキネ)の残りが少なくなっていることに気づく。
「(確か、これがラスイチだった気が…えぇ、嘘ぉ…)」
「あ、コタちゃんは練習に戻っても大丈夫です。練習後はアイシングするんで、また私のとこに来てくださいね?」
「オッケー」
コタちゃんがコートへ戻ったのと同時に、私はマネージャー道具の中にあるテーピングの在庫を確認する。
が、ホワイトやキネどころか、他のテープの在庫も危うい。