第10章 どんな顔をするのかな
観光都市、京都。
その交通の要の京都駅の前は、常に多くの人でごった返している。
そして今は夏休み、多さは通常の倍ほどだ。
「なー、自分可愛えな?一人?」
とある人物を駅の前で待っていると、知らない男の人に声を掛けられる。
「(…出た。…面倒くさいわね)」
一人でいれば必ず、と言っていいほど声を掛けられる。
それももう慣れ、私はいつものように無視を決め込んだ。
「その制服、洛山やんな?頭ええの?」
「……」
「今から俺とお茶でもどう?」
「……」
こちらに来てから思ったことは、関西の人は私がいくら無視を決め込んでも、構わず話し続ける。
単なる偏見だし、そうでない人もいることはわかっているが、私に声を掛ける人はいつだってこうだ。
「(遅いわね…早く来てちょうだいよ…)」
いつまでも私の隣で話し続ける彼に、嫌気がさしてきた時。
「華澄!」
懐かしい声が私を呼んだ。