第9章 条件があるわ
それからさっちゃんはテツ君の格好良さについて話し始める。
「…もういいかしら。私も暇じゃないのよ」
これは長丁場になると確信した私は、電話を切るように促す。
『あ、ごめんごめん。…それと、もう一つ』
「ん?」
『カスミン、IHの会場にいたでしょ?』
言葉が出なかった。
でも、あっくんにバレた時ほどの動揺はなかった。
「…話はそれだけ?もう切るわよ」
『え?ちょっ…』
バレようがバレまいが、私が洛山のマネージャーだという事実は変わらないし、これ以上深く詮索される前に、と私は強制的に電話を切った。
「桃井か」
私が電話を切ったと同時に征十郎が話しかける。
「テツ君の新技の分析を手伝って欲しかったらしいわ」
「そうか。で、それはできたのかい?」
「当然だわ」
何気ない会話をしているはずなのに、言葉の節々から、「バレていないだろうな」という感情が読み取れる。
「あなたが心配しているようなことはないわよ」
「へぇ…」
私の答えに満足したのか、征十郎はまたボールを持ってコートへ戻る。
その背中を見つめながら、私はひとつ息を吐いた。
「(かくれんぼは延長決定、ってわけね)」