第9章 条件があるわ

私は先程までと表情を一変させ、氷室さんを睨みつけた。


「そう警戒しないでくれるかな？」

「…用がないのなら私は行くわ」

「待って」


踵を返し、その場を立ち去ろうとした私を、氷室さんは腕を掴んで引き止めた。


「気安く触らないでもらえるかしら？」

「…シュウがとても心配していたよ」


その言葉に、私は一瞬だけ目を見開く。


「君の話はシュウから聞いている。赤司君…だったかな？君は自分を押し殺して、彼の言いなりだ。だが、それが正しいと思っているのかい？」

「……」

「シュウはいつだって君の心配ばかりだった。それはシュウだけじゃない、アツシもだ。今からでも遅くない…君は彼の元を離れてシュウのところへ行くべきだ」


修ちゃんにはとてつもない心配を掛けていることは、私が一番わかってる。

彼だって悪気はない。

ただ、友だちがずっと気に病んでいた私と言う存在に手を差し伸べようとしているだけだ。


「…あなたに何がわかるというのよ」

「え？」


わかってる。

だけど、今は私だっていっぱいいっぱいなんだ。


「あなたには関係ないじゃない！これは…私が望んだことなの！何も知らないあなたにとやかく言われる筋合いなんて、これっぽちもないわ！！何より…あんな征十郎を置いて私だけ逃げるなんて、できるわけないでしょう？！」

「……」


私が言い放つと、氷室さんはそっと手を離した。