第9章 条件があるわ
そして、最後に残ったのは私と征十郎。
「話があるんだろう?」
いつもなら一番に控室を出て行く征十郎だが、今回は、私が何か話があることをわかっていたように、その場に立つ。
征十郎の問いかけに、私はコクリと頷いた。
「私は今、征十郎の言付通りに一歩もここから出ていないわ。だけど、そんな一方的な話はフェアじゃないと思わない?」
「何が言いたい」
「明日以降も私にここにいろ、というのなら条件があるわ。明日の陽泉との試合、あっくんを欠場させてちょうだい」
私が言えば、征十郎は面白そうに口角を上げる。
が、目は笑っていない。
「へぇ…僕に命令するのか」
「命令じゃないわよ。強いて言うなら交渉、ってところね」
「いいだろう。敦には僕から言っておく」
征十郎は案外アッサリ承諾した。
おそらく、あっくんの膝のことに征十郎も気づいていたのだろう。