第9章 条件があるわ
その時、ちょうど控室のドアが開き、試合観戦を終えた洛山の部員たちが戻ってきた。
「こんな時までデータ分析か。感心するよ」
「ただの暇つぶしよ」
控室へ戻ってくるなり、征十郎はそんなことを言いだす。
「やっぱ『キセキの世代』の出てる試合は面白いねー」
どの試合のことを言っているのかはわからないが、コタちゃんが言う。
「面白いことは面白いかもしれませんが、私は心配ですね」
「ん?どういうことかしら?」
私が呟くと、レオ姉は首を傾げる。
「彼らは実力に体の成長が追いついていないんです。なので無理をすれば、すぐに体を壊します」
「あら、そうなの?」
私が答えれば、レオ姉だけでなく、それを聞いていた部員全員が「へぇ」と声を漏らした。
「でも赤司は心配ねーな。何てったって藍川がいるんだし」
「ああ」
永ちゃんは私と征十郎を交互に見ながら、笑って言った。
「永ちゃんの言う通り、私がいる限り、洛山の選手はどんな試合だろうと万全のコンディションで送り出しますよ」
「カスミン、言うねー」
「事実ですから」
さも当たり前かのように私は言う。
だって、それが私の仕事だから。
「もうここに用はない。すぐに帰ってミーティングだ」
征十郎が声を掛ければ、各自荷物を纏めて、控室を出てゆく。