第9章 条件があるわ
まただ。
私はこの目を前にしては、一切逆らうことはできない。
「…わかったわよ。控室からは出なければいいんでしょう」
「わかればいい」
その日は開会式のみで終わり、私は人目に付かないようにして会場を出た。
翌日からの試合も、征十郎の言付通り、私は一人控室でお留守番。
久しぶりに大ちゃんやあっくん(ついでに黄瀬)の試合が見れるというのに、一歩も外へ出るな、と言われている私がそんなことをできるはずもなく、ただただ暇だった。
「藍川?暇してんだろ?」
「樋口先輩…」
IH五日目の今現在、洛山の皆は試合観戦中だという。
そんな中でも私は、ここから出してもらえない。
「可哀想なお前のために、ほら。『キセキの世代』が出てる試合見るか?」
そう言いながら樋口先輩が渡してきたのは、ビデオカメラ。
今後、データ分析でどうせまた私は見る羽目になる品物ではあるが、暇つぶしにはちょうどいい。
「ありがとうございます」
「おう」
私にビデオカメラを渡すと、樋口先輩はまた控室を出て行った。
「(…いいわねぇ。自由に見て回れて…)」
籠の中の鳥、と言っても過言ではない私は、一つため息をつく。