第9章 条件があるわ
ビデオカメラに録画してある試合は全部で四試合。
その中に海常対桐皇戦が混じっていた。
「大ちゃんと黄瀬か…」
頭の隅で分析も行いつつ、それを再生した。
「ふーん…海常は流石ってところね…。桐皇は…帝光みたいだわ」
連携を上手く取り入れながらも、ボールを黄瀬にまわす海常。
それに対して桐皇は、帝光の頃のように、個人プレーの行使、と言ったところだ。
「…って、あら?黄瀬…?」
試合が第二クオーターに入ったところで、黄瀬の様子がおかしくなったのが、画面越しにわかった。
この動きは…。
「大ちゃんの模倣、をしているの…?」
幾度となく、何度も間近で見てきた大ちゃんの動き。
黄瀬は、できないはずの『キセキの世代』の模倣ををしようとしていた。
できないわけはない、ということはわかっていたが、ここでぶつけてくるなんてね…。
それも、今まではそんな練習はしていなかったようで、ブッツケな感じがする。
「トリガーは取れたってことね。つまり…」
黄瀬は、海常のために戦っている。
「人って変わるもんねぇ…」
以前の黄瀬ならば、チームのために戦うなんて考えられない。
そんな黄瀬を変えるほど、いいチームに恵まれた、ということなのだろう。