第9章 条件があるわ
それに…。
あんな状態の征十郎を置いて逃げるなど、できるわけがない。
『まー、細かいことは、IHで勝ってからだねー』
あっくんはいつもの調子で言うが、おそらく本気だ。
…こんなの、私は”モノ”じゃない…。
私は、どうしたらいいの…?
「…あっくん、その条件飲むわ。ただし」
私は目を閉じて、小さく深呼吸をした。
「私が『洛山にいること』は、他の誰にも言わないこと。征十郎にも絶対に話さないでちょうだい」
『オッケー。そんなんでいーのー?』
「いいわよ。征十郎が誰かに負けるなんてありえないことだわ」
『……』
それだけ言って私は電話を切った。
色々なことがありすぎて、私の頭はパンク寸前。
それでも、最後まで平静を装っていられたことに対して、自分をほめてあげたい気分だわ。
「もし征十郎が負けてしまえば…何かが変わるのかしら」
また、以前のような優しい笑みを見せてくれる?
それもこれも…あと一週間後、IHが全てなのかもしれない。
或は…冬のWC。
テツ君ならば…彼を、彼らを変えてくれるの…?