第9章 条件があるわ
ここまで誰にもバレずに隠し通せたこと自体、奇跡に近いことだ。
『やっぱそーなんだー。まー、わかってたことだけどさー。決定的な証拠?みたいなのがなかったんだよねー』
「そう…」
『でー?ホントは赤ちんのとこにいるんでしょー?』
「…どう、かしら?」
それだけは、まだ答えてはいけない気がする。
まだ確実に分かっていることは、私がアメリカにいない、ということだけ。
「あっくん、このこと…誰かに言った?」
声が震えるのを抑えながら、私は問いかけた。
『んー、言ってないよー?だってバレたら、藍ちん、赤ちんに怒られちゃうでしょー?』
「……」
あくまで、私が征十郎のところにいることを前提に話すあっくん。
間違ってはいないが、私の喉は水分を失い、言葉が思うように出ない。
『俺と藍ちんだけの秘密ねー?でさ、本題はここからなんだけどー』
何も話さない私を余所に、あっくんは続けた。
『来週からIH始まるじゃん。そこでさ、俺がもし赤ちんに勝てたら…俺のことちゃんと見てくんない?』
「…え…?」
『俺さ、ずっと藍ちんのこと好きだったんだ』