第9章 条件があるわ
と、その時。携帯の着信音が鳴り響いた。
「(…征十郎?もうバレてしまったの…?)」
恐る恐る着信相手の名前を確認すると、征十郎ではなくあっくん。
征十郎ではないことに安心したのも束の間、この電話に出るかどうか迷う。
「(出なきゃ…いけないわよね)」
意を決して私は通話ボタンを押した。
『藍ちん?やっと出てくれたー』
「…久しぶりね、あっくん…」
約四か月振りの間延びした声。
だが、今の私に懐かしんでいる余裕など微塵もない。
『メール見たー?』
「…ええ。見たわ」
『偶々室ちんに聞いたんだけどさー、それってどーゆーこと?』
「……」
あっくんの言う『室ちん』とは、氷室さんのことだということはすぐに分かった。
もうあっくんには隠し通せない。
「氷室さんの言う通りよ。私は修ちゃんのところにはいない」
もうどうせ一週間後には、皆にバレてしまうこと。