第8章 我が儘か
「本当にありがとうございます。素敵なお土産を頂いたことですので、皆さんがメニューを多少サボったことは征十郎には黙っておきますね?」
「「「?!」」」
私が気づかないとでも思っていたのだろうか。
きちんとメニューをこなしていれば、どんな風になって帰ってくるのかくらいの予想はできる。
が、目の前の三人は、その予想に達していない。
「やっぱカスミンには敵わないねー。お土産買って来ておいて良かったぁ」
コタちゃんが安堵の息をつきながら、その場にしゃがみ込んだのを見て、私は小さく笑った。
約束通り、征十郎にはこのことを黙っておくことにして、家に帰った私は、お土産を広げる。
「レオ姉に貰ったオルゴール…綺麗…」
綺麗なガラス工芸の施された、オルゴール。
ネジを回せば、耳をくすぐるような心地よく、綺麗な音色。
「永ちゃんのベーコンは…明日のお弁当に使うとしようかしら」
今すぐベーコンのみで食べるのも気が進まず、それを冷蔵庫へしまう。
「永ちゃんなりに心配してくれたのよね…」
ベーコンを買う永ちゃんの姿を想像して、少し口を緩めた。
そして残るは、コタちゃんのチーズケーキ。
「ワンホールを一人では無理だから…」
少しだけ切り分けて、残りを再び冷蔵庫へしまう。