第8章 我が儘か
あまりの傲慢さに頬を膨らますが、征十郎は呆れた顔だけして、体育館を出て行った。
「お前も大変だな」
それに続いて体育館を出て行こうとする黛さんが、私とすれ違いざまに言った。
「(ええ、そりゃ大変ですとも。それもこれも惚れた弱みってやつなのだから仕方ないじゃないっ)」
黛さんの背中を睨みつけたが、彼は何食わぬ顔で、そのまま帰っていった。
「カスミン。お土産だよー」
もうこの場にいなくなった二つの影に苛立ちながらも、言われた指令を果たすべく、今日帰ってきたばかりの三人の元へ足を運ぶ。
コタちゃんは自分たちの元へ向かってくる私の姿を確認すると、嬉しそうな顔をして言った。
「はい、これはカスミンにね!ここのチーズケーキ、まじで美味いんだよ!」
そう言ってコタちゃんがくれたのは、成美ちゃんが絶賛していた例のチーズケーキ。
「ありがとうございます」
ここのチーズケーキは、成美ちゃんが言っていたこともあるが、テレビで特集されていたのも何度か見かけた。
折角買ってきてくれたのだから、家に帰って食べてみよう…。
「ほら、俺から」
「……。ありがとう、ございます」
そう言って永ちゃんが差し出したのは、ベーコンの詰め合わせ。
「永ちゃんが誰かに肉を渡すなんて珍しいね」
「藍川は全然肉食わねーからな」
嬉しいのやら、悲しいのやら。
永ちゃんらしいと言えば、永ちゃんらしいし、私の小食を心配した上でのこのお土産ならば、文句は言わない。
「永吉ってばセンスないわね。はい、これはアタシから」
レオ姉に差し出されたのは、綺麗にラッピングされた一つの箱。
「何ですか、これ」
「ふふっ、オルゴールよ。あっちには凄くデザインに凝ったものが沢山あったの」
「わぁ…嬉しいです。ありがとうございます」
流石はレオ姉。
乙女心をわかっている。