第8章 我が儘か
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「部活も静かですね」
「このくらいがちょうどいいんじゃないか?」
二年生不在の部活。
一軍のほとんどが二年生であったこともあって、体育館はいつもよりガランとしている。
黛さんは、例の五将三人がいないことにホッと息をついていた。
「嫌いなんですか?レオ姉たちのこと」
「嫌いとか、そんなんじゃねーよ。ただ、いつも騒がしくて適わんってだけだ」
「ふーん…」
黛さんの言うことは、あながち間違ってないし、本心なんだろう。
あの三人も、黛さんのことを一応『三年生』とは見ているのだろうが、それが果たして『先輩』として見ているのか、と言われれば、首を縦に振ることはできない。
どちらかといえば、自分たちのフィールドに放り込まれた玩具くらいにしか見ていないと思う。
そのことを黛さん自身は全く気にしておらず、そんな扱いに何も言わない。
だからこそ、好きでもないし、嫌いでもない、強いて言えば煩い奴らだ…くらいにいえるのだろう。
「何をやっているんだ。二年がいないからと言って、手を抜くな。IHは目前なんだぞ」
「はいはい、わかってるよ」
「華澄もだ。手を動かせ」
「はいはい、すみませんね」
「全く、お前たちは…」
征十郎は、練習中に話す私と黛さんを引き離すべく、黛さんを練習に引き戻し、私にマネージャーの仕事を言い渡す。