第7章 良かった、って
征十郎は、少しの間私と睨みあい、またいつもの涼しい顔を装ってからコートの中へ戻って行った。
「…何なのよ」
「お前も大変だな」
征十郎の、この意味不明な一連の行動に首を傾げていると、横にいる黛さんが小さく呟いた。
「何のことですか?」
「こっちの話だ。気にするな」
「?」
征十郎もだが、黛さんもよく分からない。
私の頭の中に、いくつかのモヤモヤっとした疑念を残しながら、今日も練習は開始される。
『マネージャーだからとか関係ないわよ。華澄ちゃんだって大事な仲間でしょ?』
昨日のレオ姉の言葉が頭の中で再生された。
「(…まあ、笑えるのならこんなのもアリ、かしら)」
洛山へ来て、このバスケ部のマネージャーをできて良かった。
私は、もう一度ここでやり直せるかもしれない。
だから…。
征十郎もまた、笑ってくれたらいいな。
「なんて、私らしくないわね」
私は自嘲気味に少し笑った。