第7章 良かった、って
朝ごはんを食べるのなんていつ振りだろう。
いつもは食べていなかったし。
そもそも誰かにご飯を作ってもらうこと自体、久しぶりだ。
「最近、華澄ちゃん食欲がないって言ってたでしょ?どことなく痩せてた気もして、心配だったのよ」
「……」
心配や迷惑を掛けたくなくて、無理にでも笑っていたのに。
レオ姉には気づかれてたんだわ。
「ねーねー、カスミン。この写真って帝光の時の?」
コタちゃんが指さす先には、三つの写真立て。
「そうですよ」
「これって、全中優勝した時のでしょ。まだ俺らがいる時の?」
コタちゃんの言う写真は、全中二連覇した時に修ちゃんに撮ってもらった、皆がまだ笑ってる写真。
それを見ただけでも、私は少し悲しい気持ちになってしまう。
「二連覇の時なんで、コタちゃんたちが中三の時ですね」
「へぇ…三連覇の時じゃねーんだな」
永ちゃんは不思議そうに写真を見た。
「三連覇の時は…そんな雰囲気もなかったので…」
「インタビューとか凄そうだしね」
「……」
優勝したことは知っていても、その悲惨な試合内容を知らない三人は、写真をまじまじと見る。
「この征ちゃん…笑ってるわ。こんな顔もするのね」
写真の中の征十郎は穏やかな優しい笑みを見せている。
今ではもう、見ることなど叶わない笑顔だ。