第7章 良かった、って
この場にいるスタメン五人は、そこまで成績が悪いとは聞いていないが、念のための保険、と言ったところだろう。
「征ちゃんが言うのなら、そうしましょう」
レオ姉があっさり承諾し、コタちゃんと永ちゃんも渋々ながらそれに頷いた。
黛さんは端からどちらでも良かったらしく、無言の了承をしていた。
「そこで華澄。レギュラー陣の全員の自主練メニューを組んでおけ」
「は?」
何が、「そこで華澄」よ。
テスト勉強のためのオフで、結局メニューを組んだら意味がないじゃない。
それに、どうしてそうも私に面倒事を押し付けるのかしら。
「一日オフでもトレーニングくらいはしておくべきだということはお前もわかっているだろう」
「わかったわよ。作ればいいんでしょう、作れば」
私の言い方が気に入らなかったのか、征十郎はムッとした表情を一瞬見せるが、すぐにいつもの涼しい顔に戻った。
「(…全く、相変わらず人使いが粗いわね)」
「人聞きが悪いな」
「どうして心の声が聞こえてるのよ」
時々、こいつは人間ではなく、妖怪か何かではないかと思うことがある。
その後、週末まで、レギュラー陣全員の毎日の練習を様子を見ながら、自主練メニューを組み、土曜日にはそれを渡した。
私の仕事ぶりを樋口先輩は褒めてくれるが、征十郎はさも当たり前だ、といった表情しか浮かべなかった。
…とことん腹の立つ人ね。