第6章 ありえませんよ
頭が混乱し、それと同時に羞恥で顔が赤くなっていくのがわかり、私は思わず俯いた。
「お前たち、いつまで話しているんだ」
征十郎が声を掛け、その日もいつものように練習は開始される。
仕事を普段通りにこなしながらも、私の頭の中はレオ姉の言葉でいっぱい。
「(…どうして、そんなに優しくしてくれるの?)」
私が大切な道具だから?
いなくなられては面倒だから?
…それとも。
「ないないない。絶対にそれはあり得ないわ!」
「あ、藍川?急にどうしたんだ?」
突然首を激しく横に振りながら声を上げる私を、樋口先輩は驚いた顔をして見た。
何でもありません、と答え、私はまた俯く。
「(期待なんてしてはダメよ)」
自分に言い聞かせ、私は練習に目を戻した。
後日、校内新聞で球技大会MVPの征十郎が一面を飾ったのは言うまでもない。