第6章 ありえませんよ
その時、コタちゃんが何か思い出すようにして言った。
「赤司、凄かったなー。敵なのに思わず見入っちゃったもん、俺」
「確かにな…サッカー部顔負けだったな」
「そんなことより、あの華澄ちゃんを抱き上げたシーン!アタシ悲鳴あげちゃったわ」
「え?」
三人が口々に今日の征十郎の様子を言い出して、私は色んな意味で困惑する。
ウルトラスペックを持つ征十郎が、どんなスポーツだろうと難なくこなすのは簡単に想像つく。
それでも実際に見たかったな、という感情。
それと、レオ姉が言う私を抱き上げたシーン…?
「華澄ちゃんが倒れた後、征ちゃんがコートに颯爽と現れて、華澄ちゃんをお姫様抱っこで保健室まで運んだのよ?」
「王子様って本当にいるんだな、って思ったよ」
「王子様って、お前…」
「え?え?」
何のこと?
え?
お、お、お姫様抱っこ?!
そんなの家族以外に修ちゃんにしかしてもらったことがない!
嘘?
え?どういうこと?!