第6章 ありえませんよ
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ふわふわとした懐かしい感覚。
私の大好きな匂い。
「…ん…」
「気が付いたか」
目を覚ました私は、どうやら保健室にいるようで、何故こんなことになっているのかを頭の中で整理する。
「(えーっと…試合に出てて、ボールが当たって…あ)」
ああ、そうだったわ。
私あのまま気を失ってしまったのね。
「怪我はするな、と言っただろう」
私の眠るベッドの傍らには征十郎の姿。
彼はまた呆れたようにして私を見ていた。
「試合は?」
「僕の方はどちらも優勝だ。女子は残念だったようだが、総合優勝は取れたよ」
大分長い間眠っていたらしく、もう既に球技大会は終わったとのことだ。
そして聞き捨てならないのが、当然の如く征十郎が優勝したということ。
「そう…折角練習したのに、レオ姉たちにも申し訳ないわ…」
あーぁ。
一週間わざわざ私の練習に付き合ってもらったというのに、こんな結果ってありえます?
征十郎のバレーやサッカーをしてるところも見たかったわ…。