第6章 ありえませんよ
中学の後半からこうして二人で並んで歩くことはめっきり減っていたが、高校に入ってからはまた一緒にいることが増えた。
以前のような優しい雰囲気もなければ、笑いかけてくれることもないが、それだけでも私は良かった。
「藍川さーん。試合前に少しパスだけやろー?」
体育館に着けば、第一試合の私のクラスのチームは既にコートに集まっていた。
征十郎にじゃあ、と短く告げて、私はコートの中へ入っていった。
「ねぇ、赤司様の隣にいるのって葉山先輩じゃない?!」
「赤司様が見てる…?!緊張しちゃう!!」
「きゃーっ実渕先輩!!」
「根武谷先輩もいるよ!」
「…あの隣にいる人、誰?…でも、なんか格好いいっ」
試合直前に、チームメイトの子たちが何やら騒ぎ出したので、その視線の先を辿れば、征十郎の横に並ぶ五将の三人と影の薄い黛さん。
「カスミンー!頑張れーっ!」
「「「きゃーっ!!」」」
コタちゃんが私に向かって大きく手を振れば、周囲の女の子たちは黄色い悲鳴を上げる。
「(…ん?この応援は私に対してじゃなかったの?)」
というよりどうして皆いるの?!
黛さんまで!