第6章 ありえませんよ
普段は全くと言っていいほど運動しない私が急に体を動かせば、それなりに体を痛めてしまう。
まさか部のために養った知識を自分のために使う時が来るなんて思いもしなかった。
「ここはいつからバレー部になったんだ」
眉間に皺を寄せた征十郎と。
その後ろから体育館の端で私を訝しげに見ていたレオ姉、コタちゃん、永ちゃんがぞろぞろと私の元へやってくる。
「誰のせいだと思ってるのよ」
睨みあう私と征十郎。
「あら、華澄ちゃんバレー選択なの?」
その私たちの間にレオ姉が割入って問いかける。
「へ?あ、ああ。球技大会か」
「カスミン、バレーできんの?!」
「できないから練習するんです」
私が口を尖らせて答えれば、三人はへぇ…と声を漏らした。
多分この三人は、私が運動音痴なことを知らないんだろうな。
「練習に支障が出ない程度にしろ」
「言われなくてもわかってるわよ」
それだけ言うと、征十郎はコートへ戻り、練習を始めさせた。
私も練習の合間を見て、バレーの練習をしようと試みたが、普段の練習ですら忙しいのだからそんな余裕は一切なかった。
そして、結局私はボールをわざわざ借りたにも関わらず、全く練習をすることができずにその日の部活を終えた。