第5章 鬼灯の日記
そうして連れてこられたのは、賑わう京の街。
笛の軽快な音色に出迎えられ、暖かな提灯の光に包まれて。
私も知っている。大好きな、大好きな催。
「お祭ですか!」
「いちいち確認を取らねばならん程理解力に欠けるのか。」
「良いじゃないですか。嬉しいんですから。」
呆れる風間さんを他所に、人目を気にせずはしゃぐ私。
そんな私を見てさらに呆れ顔になる風間さんだけど、もしかして、ずっと薩摩に置いてけぼりだった私を気にして連れ出してくれたのかな。
勿論、これは本人には言えないけど。
心の片隅でお礼を言っておくだけに留めておくけど。
そして忘れてはいけないけど、これは風間さんが薩摩の命令を受けての調査。
禁門の変以後、京の民達が尊皇派をどう思っているのか。今後、邪魔する可能性があるのかどうか。
人が集まる祭りの時だからこそ、いろんな情報が湧いてくる。
風間さんはそこを狙ったんだろうね。
但し、私はその片手間に連れてこられただけ。
純粋に楽しませてもらうだけだから。
そんなこんなで私は、風間さんの本来の目的など一切気に留める事なくその鮮やかな雰囲気の中ではしゃいでいた。
いつしか忘れていた無邪気であどけない笑顔を自然と浮かべながら、回って…一緒に見て回って…
…いたはずだった。
「え、嘘…」
知らない土地、賑わい視界が遮られたこの場所で、いつの間にか1人ポツンと佇んでいた。