第4章 雨降って虹
翌日、この日凛は急遽足りなくなってしまった材料を求めて市中へ出向いていた。
少しだけ雲がかった空を度々気にしつつ、少々足早に目的の店まで進んでいく。
「会っても何を話せばいいのか分からない。でも、あの時の私の軽率な行動のせいで辛い目に遭ってるんだし。謝っても許してもらえるかなんて分からないよね。そもそも何処にいるかすら分からないのに…」
淀んだ天気を眺めていると、考えてしまう事も少々重たいもの。岡田とどう仲直りすれば良いものか、未だ凛の中で葛藤が起こっていた。
「以蔵君、何処にいるのかな…」
「僕が…何?」
「何って…うわっ!?い、以蔵君!?」
上の空で独り言を唱えていれば、いつの間にか後ろからひょっこり顔を出したのは正しく探し求めていた相手。思わぬところでの再会に凛はかなりの動揺っぷりだ。
「僕が…何?」
「ふっ…あは…あははっ…」
同じ言葉を繰り返して、返答を求める岡田が余りにも知っている姿で、思わず溢れた笑い声。
「何?…僕何かおかしな事…したの?」
「違う。違うの。そうじゃなく…あ…」
突如、ポツリポツリと降り出した雨に、言葉を遮られた。
雨が降る。たったそれだけのことで、辺りには雨音しか響かなくなる。なんとも不思議だが、誰も気に留めることはない。気に留める必要がない。
「こっち、来て。」
そうして繋がれた温もりに引かれ、雨の中を足早に歩き出した。