第3章 もう一つの月見日和
「見つけましたよ、沖田さん。」
現れたのは山崎だった。
気のせいか、息遣いが荒くも感じられる。
大方予想は出来るものだが。
「また副長の私物を持ち出して…!いい加減反省してください!」
「やだなぁ。こんなに面白いものが見れるのに、止めろだなんて酷いなぁ。」
「総司、お前また…」
左右からお咎めを受けながらもヘラヘラと笑う沖田。
これが普段からよく見る光景なのだから、平穏だと感じられる。全く、習慣とは怖いものなのかもしれない。
「いいじゃない。さっきも言ったでしょ?僕達は人斬り集団で、明日をも知れない身なんだ。楽しい事は出来る時に思いっきりしておくべきでしょ?」
「開き直らないでください。ほら、さっさと帰って副長に返して下さいね。」
「もう。やっぱり君も面倒くさいなぁ。一君、山崎君連れて先に帰っててよ。」
そもそも山崎がここに来たのは沖田を連れて帰るためだ。
その山崎が何故斎藤と帰らねばならないのだろう。
「総司、お前は一体何を言っている。副長に帰れと命令を受けたのはお前だろう。」
「貴方が帰らなければ意味がない事、流石にわかっているでしょう?」
先程から沖田のしたい事がよくわからないのだが。
当の本人は至って楽しげに話した。
「みんなへのお土産は買ったけど、千鶴ちゃんの分がまだだから。
いくら量があっても、どうせ平助とか新八さん辺りが大食い競争でもしてすぐになくなっちゃうよ。
僕と千鶴ちゃんは2人でのんびりお団子でも食べるからね。」
それを聞いた斎藤と山崎の反応は…ご想像にお任せしよう。
紅葉を仰いだ昼の空が、一体どれほどの星を映し出すのか。
お楽しみの月見の時間は、これから始まる_________