第3章 もう一つの月見日和
「紅葉も紅くなって。伊東さんの件で時間が経つのが遅かった様にも感じてたけど、もう秋だったんだね。」
川に沿って鮮やかに街を彩る紅葉の葉。風に揺れ、葉音を鳴らし、夕暮れの様な橙色が青空に映える雅な風景を眺めては、いつもより少しのんびりと会話を交わしていた。
しかし斎藤はと言えば、別のところに意識を向けていた。
「総司、ここ最近の体調はどうだ。」
「ん?どうしたの急に。まさか、また土方さんから何か言われたの?」
「いや、そうではないのだが。」
そよ風に揺られ宙を舞う葉が儚さを思わせる。
そこから連鎖して、斎藤は口にした。
「最近お前は体調不良による隊務の欠席が増えている。」
「まあ、全部過保護な土方さんの指示だけどね。」
「周りからその様に見えているのは事実。お前も自覚はあるのではないか?」
「どうせ軽い風邪が長引いてるだけだよ。それとも何?土方さんの過保護が一君にも移ったの?」
正論過ぎる斎藤の言葉に結局沖田は詳細を話そうとはしなかった。
普段通りただ皮肉めいた事だけ言って。そのまま先を行く。
「着いた。一君、ここだよ。」