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希望の果てにあるものは

第14章 非常事態


九冊目のファイルを読んでいたとき、ふと思った。
プロフィールの部分に書かれた数字とこの首の数字は同じではないかと。
たしか私の首の数字は520115だった。


(一冊で一万人分だから私の数字の場合だと……五十二冊目?)


棚の二段目にある『被験者データ52』と書かれたファイルを手に取る。
このファイルの左隣には『被験者データ51』があるが、右隣には何もない。
ファイルを開いて慎重に目を通す。
すると、十一ページ目に見覚えのある写真が貼られていた。


「――――シロさん?」


髪は黒くて短いが顔はシロさんとまったく同じだった。
慌ててプロフィール欄を見る。
名前の欄には『水原悠』とあり、隣には『520108』と書かれている。
どこかで『水原』という名字を見た気がしたが、まずは確認しなければ。
ファイルを手に持ったまま振り向くと、真後ろにいたシロさんと目が合う。


「うわっ! しししシロさん! なんで私の後ろに……!?」

「呼ばれたから」

「そういえばさっきシロさんの名前……って、それよりちょっと失礼します!」

「……?」


シロさんの首に顔を近づける。
白人かと疑うほど白い首筋には『520108』という数字がある。
けど、私たちのものとは違い、マジックペンらしきもので書かれている。
不思議に思ったが、まあ気にしないでおこう。
ファイルの数字はやはり首にある数字と同じものだったようだ。
つまり、この写真の人物はシロさんということで、シロさんの本名は……。


「……水原、悠さん」

「……?」

「シロさんの本名です。水原悠(みずはらゆう)……それがシロさんの……本当の名前なんですよ」


シロさんは珍しく目を見開いている。
けど、驚きの表情はすぐに悲しげな表情に変わった。
泣きそうなシロさんに今度は私が驚き、思わず手にあるファイルを落とす。
落とした際に足にファイルの角が当たったが、それどころじゃなかった。

 
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