第14章 非常事態
「それにしても、シロさんの勘ってすごいですね」
「……僕の勘、よく当たるみたいだから」
「へえ……」
シロさんが向かった先に本当に部屋があったのだから驚いた。
勘も意外とバカにできないものだ。
部屋に【Failure】がいなかったのはラッキーだった。
あいつらは力加減というものを知らない。
また思いっきり扉を開け放って、扉の蝶番が破壊されていたかもしれない。
さらに嫌なのが、【Failure】が部屋の中で倒れてしまった場合だ。
気絶している【Failure】が目覚める前にその体を外へ運ばなければならない。
手袋や余分な布など持っていないため、もちろん素手で。
緑の液体にまみれた【Failure】の体を素手で触るのかと思うと……。
(うわ、鳥肌が……)
ゾクリと背筋に冷たいものが走った。
けど、最悪なのは、撃たれても気絶しない【Failure】がいることだろう。
あれに出会ったらとにかく逃げるしかない。
津山さんはあいつの頭を切り落とすことで助かったらしいが私には【Failure】の懐に飛び込んで首を切断するなんて芸当、とても真似できない。
つまりは逃げる以外の選択肢がないのだ。
しかもこちらは気絶している人間を三人も運んでいる。
武器以外何も持っていないときでさえ逃げきることができなかったのに、人間を抱えて逃げるなんて絶対に無理だ。数秒で追いつかれて殺される。
本当によかった、部屋の中に誰もいなくて。