第14章 非常事態
三人が倒れて混乱していた私はシロさんに言われるがままについていった。
けど、時間が経つにつれて次第に冷静になっていく。
このまま進んでもいいのかと、落ち着いた私は心配になってきた。
いつもぼんやりとしているシロさんについていって、大丈夫なのかと。
「あの、先へ進んで大丈夫なんですか……?」
ズルズルと津山さんの足を引きずりながら尋ねる。
シロさんは二人も抱えているのだから、重いなんて文句は言えない。
心の中で、足を引きずられる津山さんにごめんなさいと謝った。
「大丈夫」
「……えっと、この先に部屋があるってわかるんですか?」
「勘」
「なるほど勘ですか……。……勘? え、勘!?」
シロさんの言葉に少し遅れて反応する。
聞き間違えでなければ、シロさんは今『勘』と言ったような気がする。
あまりにも迷いなく進んでいくものだから、この先に部屋があるという根拠でもあるのかと思っていたのに、まさかの勘であった。
自分の勘をここまで信じられるシロさんはある意味すごい。
「……あった」
「え? ……あ、本当だ……」
ここから五メートルほど離れた場所に扉らしきものが見えた。
近づいてドアノブに手をかけ――――ぱっと手を離す。
この部屋にも【Failure】が隠れ潜んでいるかもしれないからだ。
意識のない津山さんの体を床に座らせ、銃を持って扉に近づく。
もし部屋に撃っても倒れない【Failure】がいたらと思うとゾッとするが……。
まあそのときはそのときだと、私は覚悟を決めて扉をノックし、扉から離れる。
だが、三十秒ほど経っても中からは物音一つしない。
(……大丈夫かな)
恐る恐る扉を開けて中を覗き見る。――――誰もいない。
部屋には隠れられそうな場所もないためこの部屋には誰もいないようだ。
銃をポケットに入れて津山さんの体を部屋に運び入れる。
大きな机に積もったホコリを払い落とし、その上に体を横たえる。
固くて寝心地はさぞ悪いことだろうが、ホコリまみれの床よりはマシなはずだ。
シロさんも真琴と健斗君の体を同じように机の上に横たえた。
ほっと一息つき、改めて部屋を見回す。
扉に取り付けられていたプレートには、『資料室』と書かれてあった。