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希望の果てにあるものは

第13章 再会


話を聞き終え改めて今いる部屋を見回す。
本棚が倒れて床に散乱する本と蝶番が壊れた扉。
この部屋には見覚えがあった。二人で読書……休憩をしていた場所だ。
ただ一つ違うのは、倒したはずの【Failure】の死体がない。
飛び散った肉片や血は残っているのに、死体だけが消えている。
床には廊下に向かって何かを引きずった跡のようなものがあった。
……嫌な予感がする。


「……ねえ、ここに死体があったはずなんだけど……」


死体がある部屋じゃ落ち着けないから移動させた、と言ってほしかった。
廊下には移動させられた死体が転がっていてほしかった。
けど、真琴の口からはまったく別の言葉が出てきた。


「……なかったよ。死体なんて、なかった」

「……そんな」


これはあくまで私の想像。
証明するものなど何もないただの絵空事。

死なない【Failure】は頭がなくなっても動き続けた。
散々見てきた【Failure】は頭がなくなると簡単に倒れた。
けど、ただ倒れただけで、本当は生きていたとしたら?
頭を失ったショックで気絶していただけなのだとしたら……。

――――【Failure】は、不死の化け物ということになる。


(実験は成功していたんだ……歪な形で)


そもそも【Failure】は不老不死の薬を作る過程で生み出されてしまったもの。
ならば【Failure】が不死であってもおかしくはない。
もっとも不死である【Failure】になるためには一度死ぬ必要があるため、研究者たちにとって【Failure】はその名の通りfailure……“失敗作”なのだろうが。
研究者たちは、このことに気づいていたのだろうか。
日記はまだ全て読み終えたわけではない。
さらに読み進めれば、新たな真実が明らかになるのかもしれない――――。


(……そっか。だから……)


日記に何が書かれているのか、無意識のうちに感じとっていたのだろう。
だから私はずっと日記を読みたくないと思っていたのだ。


頭は読めと言う(理性は真実を知れと言う)。

心は読みたくないと叫ぶ(本能は現実など知りたくないと叫ぶ)。


私は読んでしまった。
頭に、理性に、従ってしまった。


(……読まなければ……いや、見つけなければよかった)


こんな、残酷な日記。

 
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