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希望の果てにあるものは

第12章 記憶


また拘束された。
固い台の上に体を押しつけられて縛られる。
あの日からずっと、檻の中で無気力に過ごしていた。
けど、奇妙な色の液体が入った注射器を目にした瞬間、私は暴れた。


『やめて! いやだああ――!!』

『……ごめんね』

『――――!!』


腕に針が刺さり、液体が注入される。
病院で打たれる普通の注射と同じ程度の痛み。
だけど、言い様のない気持ち悪さが全身を支配していく。

謝るくらいならしなければいいのにと、頭の片隅で思った。


『…………』


液体が全て注入されたころには、抵抗する気力はなくなっていた。
何をしても手遅れなのだとわかってしまった。
なんでこんな目に遭わなければならないんだと泣き叫びたかったけど、もう涙を流す気力すら残っていなくて。
拘束具が外されていくのを、まるで他人事のように眺めていた。


『……ごめんね。でも、この薬なら、すぐに死ぬことはないから』


安心して、と男は言った。


(……死ななければ、いいの?)


死なないなら安心できると本当に思ってるの?
死にさえしなければいいと、本気で言ってるの?

狂ってる。
根本的な何かが狂ってしまっている。
この人の価値観と私の価値観はまったく違うものなのだろう。


狂ってしまっているこの人を、可哀想だと思った。

 
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