第11章 BAD END
「うそっ、なんで……!?」
「下がって!」
健斗君の前に出て【Failure】の左胸に弾丸を撃ち込む。
頭を撃って倒れないのならば、あいつは他のやつとは違って心臓が急所なのではないかと思ったからだ。だが、【Failure】は倒れない。
焦りを覚えた私は人間の急所全てに弾丸で穴を空けたが、それでも。
「……そんな」
【Failure】は、倒れなかった。
あれを倒すことはできないと悟った私がとった行動は。
「くそっ……逃げるよ!」
「え、えっ?」
逃走。
初めて【Failure】に襲われたときに私がとった行動だ。
逃げる以外の選択肢など考えている暇などない。
健斗君の手を引いて走りながら肩越しに後ろを見て、私は目を見開いた。
(速い……!)
速いといっても、追いつかれそうなほど速いわけではない。
けど、今までの【Failure】ならば、すでにその姿は見えなくなっていた。
だというのに、あいつは私たちについてきている。
離れることも近づくこともないが、これはかなり危険な状況だった。
振り切ることができなければ、こちらの体力が尽きたその瞬間に追いつかれる。
進行方向に扉が見え、あの部屋に逃げ込もうかと考えたが、やめた。
部屋に逃げ込めば袋のネズミとなってしまう。
【Failure】が扉を開ける瞬間はこれまで何度も見てきた。
あいつらがただの能無しならよかったと、これほど思ったことはない。
知性があるのならば追うのを“諦める”ということもできるだろうが、あいにくあいつが私たちを追うのを諦める理由が今はない……!
ああもう、どうしろっていうんだ!