第11章 BAD END
「はあ……はぁ……っ、しつこい、なあ……」
「蒼ちゃん大丈夫……?」
「大丈夫……あーいや、ごめん大丈夫じゃない。きつい……」
健斗君に心配かけないようにと嘘をつこうとしたが、大丈夫じゃないことなんて誰の目から見てもわかるため、本当のことを言った。
いつのまにか健斗君が前を走り、私は手を引かれている。
苦しいのは私だけ。健斗君は汗一つかいていない。
足がもつれて転びそうになるたびに健斗君に支えてもらっている。
ああ、とうとう体まで健斗君に支えてもらうようになってしまったな……。
命がけのおいかけっこは終わりが見えない。
追いつかれたら死。制限時間はなし。相手の体力は底なし。
勝ち目なんてあるわけない。でも、足を止めるわけにもいかなかった。
死にたくない。
その思いだけが足を動かす力となる。
(……でも、思いだけじゃどうにもならないこともあるもんなぁ……)
限界だった。
いや、限界なんてとっくにきている。
限界を迎えてなお動けていたのは、健斗君が手を引いていてくれたから。
だけど、手を引いてもらったって……。
(足が動かなくなったら、意味ないよなぁ……)
足が止まる。
体が前に倒れていき、手を掴んでくれていた健斗君も巻き込んでしまう。
ごめんね、なんてたった四文字の言葉を口にする気力すらなくて。
「蒼ちゃん! 蒼ちゃんっっ!!」
素早く体を起こした健斗君に体を揺さぶられる。
(逃げて)
あいつはすぐそこまで来ている。
動けない私なんて放っておいて早く逃げてくれ。
きっと【Failure】は私を殺すために立ち止まるだろう。
だからその隙になるべく遠くまで逃げて。
疲れを感じない今の体なら、もしかしたら逃げ切れるかもしれない。
けど、もしもただ疲れを感じないだけで、体にしっかりと疲労が蓄積されていたらまずいかもしれないなぁ……。
私の名前を呼ぶ声を聞きながら、私は意識を飛ばした。
……最後に、会いたかったな……。