第11章 BAD END
「たしかに、今の健斗君じゃ戦いで出来ることはない」
「……うん」
「でもね、健斗君はずっと、私の“心”を支えてくれてたんだよ」
「えっ……!」
健斗君に自覚はなかったんだろう。
自分の体を守ることはできても、心を守るというのはなかなか難しいことだ。
そんな難しいことを、健斗君は簡単にやってのけた。
私の体を守っているのは私だけど、私の心を守っているのは健斗君なんだ。
「だから、弱いなんて思わないで。――――君は、とても強い人だよ」
空いている左手を健斗君の肩に置き、そう告げると。
健斗君は、なぜか泣き出した。
泣き声をあげることもなく、ただ目からポロポロと涙をこぼしている。
そんな健斗君を見て、私の頭は軽いパニック状態に陥った。
(ええええ!? 自分で言うのもなんだけどわりといいこと言ったと思ったのに泣かせちゃったよどうしよう! 無言で泣かれると本当にもうどうしたらいいのかわからない……! あああ泣かないで健斗君……!)
混乱しているのが顔に出ていたのだろう。
静かに泣いていた健斗君は、涙を流しながらくすりと笑った。
「ははっ……変な顔……」
「へ、変!? うわあ、笑われるほど変な顔してたのか私……。まあでも、健斗君が笑顔になれるなら変な顔も悪くないかな……」
恥ずかしいけど、泣かれるよりずっといい。
泣きたいときは泣いてもいいけど、できれば笑っていてほしかった。
何が原因で泣いてるのかわからないと不安になる。
「……ありがとう、蒼ちゃん」
「え? ああ、うん……どういたしまして……」
なぜお礼を言われたのかわからないが、とりあえず返事をした。
……さて、そろそろ先へ進まなければ。