第11章 BAD END
「なんでフェ……化け物を撃ったの?」
思わず【Failure】と言いかけたが、すぐに化け物と言い直す。
化け物の正式名称は日記を読んだ私にしかわからない。
日記の内容を知られないためにも、この名前を口にしない方がいいだろう。
「なんでって、倒さないといけないから……」
「あー……ごめん、言い方が悪かった。いつもは私が倒してるのに、さっきはいきなり健斗君が撃ったから驚いたんだ。もちろん撃てるようになったのはよかったと思うけど、ちょっと不思議に思って……」
健斗君は優しい人だ。
けど、優しいが故に生き物を傷つけられない人だと思っていたのだ。
ただの思い込みだから事実と違っていても不思議はない。
それでも、私は不思議だと感じてしまったわけで。
「……強くなりたかった」
「え……。十分強いと思うけど……」
「お世辞なんていいよ……。……僕は弱い。化け物に怯えて蒼ちゃんにすがって、ようやく慣れても、蒼ちゃんに守ってもらってばかりで……僕は何もできてない。蒼ちゃんに迷惑かけてばっかりだ」
まさか、そんなことを思っていたなんて。
健斗君を守ってあげなくてはと思ったことはたしかにあった。
けど、迷惑をかけられたと思ったことなんて一度もない。
強いというのもお世辞なんかじゃない。本当に強い人だと思っている。
誰もが目を閉じて耳を塞ぎたいと思う光景から目を逸らさず、必死に自分の中にある恐怖心と戦う健斗君を、私は素直に『強い』と感じたのだ。
「迷惑かけられたって思ったことはない。私は健斗君がいてくれてよかったって思ってるよ。健斗君が追いかけてきてくれて、すごく嬉しかった」
これは紛れもない私の本心だ。
健斗君がいなかったら、今ごろ恐怖で潰れていたかもしれないのだから。
あまりに凄惨な真実を知ってしまった時も、健斗君がいたから私は正気を保っていられたんだと思う。一人だったら、目を逸らすことすらできなかった。