第11章 BAD END
平和な時間は唐突に終わりを迎える。
曲がり角から突然現れた【Failure】に、一瞬反応が遅れてしまう。
けど、一瞬の遅れで距離を詰められるほど相手は速くない。
いつ襲われてもいいようにと常に右手に持っている銃を両手で構え、【Failure】の額に照準を合わせて引き金を引くには十分すぎるほど時間があった。
だが。
「…………え?」
発砲音が聞こえた。
けど、私が持っている銃の銃口から硝煙は出ていない。
じゃあ、いったい誰が。
「はぁっ、はぁっ……」
苦しそうに肩で息をする健斗君。心なしか顔が青ざめている。
――――わずかに震える手に握られた銃からは、硝煙が立ち上っていた。
「…………」
正直言って、かなり驚いた。
部屋に【Failure】が侵入してきて戸惑っていた健斗君が、銃を撃つなんて。
しかも私に撃てと言われたならともかく、自分から。
本当に、彼にいつどんな心境の変化があったんだ。とても気になる。
一撃で仕留められた【Failure】は、ゆっくりと後ろに倒れて――――。
(ってなったらかっこいいんだけどなぁ……)
残念ながら、君が撃った弾は【Failure】を仕留められなかったらしいよ。
銃から撃ちだされた弾丸は【Failure】の左肩を吹っ飛ばした。
けど、そんなことはお構いなしにと【Failure】はこちらへ迫ってくる。
隣で「えええぇぇ!!」と叫ぶ健斗君に心の中で同情し、銃を撃つ。
頭を撃たれた【Failure】は倒れ、辺りに沈黙が広がる。
無言で立ち尽くす健斗君の肩に手を置く。
まあ一回目なんてこんなものだ。次頑張ればいい。
思いつく限りの励ましの言葉をかけたが、健斗君は何も言わなかった。
……ここで、私は一回で成功したけど、なんてことを言った日には。
(立ち直れなくなるだろうなぁ、健斗君)
この言葉は絶対に言わないと心に決めた。