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希望の果てにあるものは

第9章 日記


「わあっ!!」


勢いよく振り向いた私に驚いたのか、健斗君は叫んで後ずさった。
ここで叫ぶのは私だと思うのだがまあいい。
大袈裟な反応をした私にも否があるため、「ごめん」と謝る。


「あ、ううん、気にしないで。……ずいぶん集中してたみたいだね」

「えーっと……すごく興味深い内容だったから。休憩はもういいの?」


たとえ嘘でもこの日記を面白いと言うことはできなかった。
興味深いというのは嘘ではないはずだ。


「……うん、僕はもういいよ。それより、あれ……」

「あれ?」


健斗君が指差す方向には棚で塞がれた扉がある。
ぱっと見は先程と変わらないが、目を凝らして見ると異変に気づいた。
棚の位置がズレている。扉にはわずかな隙間ができていた。
扉の隙間から覗く、皮膚が溶けて骨が剥き出しになっている指。

反射的に立ち上がり銃を構えた。


「い、いつのまにあんな……!」


まったく気づかなかった。
日記を読むのに集中しすぎて気づけなかったのか、化け物……【Failure】が音を立てないよう少しずつドアノブを回して扉を開けたのかはわからない。
ただ一つ言えるのは、このままだと確実に部屋に侵入される。

視界の端に慣れない手つきで銃を持つ健斗君が見えた。
あれでは彼の撃った弾丸が【Failure】に当たることは期待できない。
最悪の場合、流れ弾がこちらへ来る可能性もある。
だが、止めた方がいいと言う時間を【Failure】は与えてくれなかった。


「ア゙ァ――――……」


こちらが気づいたのに気づいたのか、【Failure】は一気に扉を開けた。
まさかとは思うが、【Failure】には知性があるのだろうか。
あれでも元は人間。あってもおかしくはないがこちらとしては非常に困る……!


「ああ、あ、き、来た!」

「落ち着いて! ここは私がやる!」


焦って片手で撃つなんてバカな失敗は二度としない。
しっかりと両手で銃を包むように持ち、照準を【Failure】の額に合わせる。
右手の人差し指で引き金を引くのとほぼ同時に、【Failure】の頭は破壊された。
肉片と首から溢れる緑の液体がびたびたと落ちて床を汚していく。

ほんのわずかだが、罪悪感を感じた。
あれが元は人間だったということを知ってしまったからだろう。

 
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