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希望の果てにあるものは

第9章 日記


『【Failure】に変化した被験者を解剖して調べたが、原因は不明。
死体を焼却しようとしたが、なぜか火が死体に燃え移ることはなかった。
焼却は諦め、研究所から三百メートルほど離れた場所に死体を埋めた。
【Failure】への謎は深まるばかりだ。
だが、我々の目的は不老不死の薬を作ること。【Failure】の研究ではない。
明日は【Bー41】を五名の被験者に投薬する。
残りの被験者は五十二名。実験を進めるには被験者の補充が必須である』


これを読んで最初に感じた疑問は。


(これ日記か……?)


日記というのは、こんな感じのものだっただろうか。
これはどちらかというと研究や実験の記録と言うべきだと私は思う。

まあそれは今さら気にしても仕方ないから置いておくとして。
このページで気になったことは四つ。
燃えない死体。不老不死の薬。【Bー41】。被験者の補充。
恐らく【Bー41】とは薬の名前だ。四十一個目の薬、ということだろう。
不老不死の薬というのは、今まで不死の薬を作っているのだとばかり思っていたため少し驚いただけで、よく考えると気にするほどのことでもなかった。
燃えない死体については単純に不思議だなと感じただけだ。
まあ使っている武器は銃だから、私たちにはあまり関係ないことだろう。

だが、被験者の補充という言葉はさすがに無視できない。
実験に使われていたのは、人間を実験台にすることに反対した研究員たち。
当然だが、次々に死んでいけば被験者はいなくなる。
作った薬を試すための生物がいなければ実験は進められない。

日記を書いた研究者はもうモルモットを使う気はないだろう。
ならば被験者の補充とは、人間を補充するということ。

いったいそれは、どこからどうやって?


(――――まさか)


日記を見つける前から考えていた、私たちを誘拐した人間の目的。
色々な可能性を想像していたが、たしか私はこうも考えていたはずだ。

『誘拐犯の目的が投薬実験の被験者を集めることだとしたら』――――と。


(……違う。違う違う違う!!)


これ以上考えたくない。
許容範囲なんてとっくに超えている。もう何も受け入れられない。

固く目を閉じて頭に浮かんだ可能性を消し去ろうとしていると、ふいに肩に手を置かれ、驚いた私は思わず目を見開いて振り向いた。

 
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