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希望の果てにあるものは

第9章 日記


同じようなことが書かれているページを斜め読みしながら適当にめくる。

ふと、ページをめくる手が止まる。
日記の五十九ページに書かれている内容に、絶句した。


『死者が息を吹き返した。
死体の焼却に向かった研究員二名のうち一名が死亡。
目撃者によると、腐敗した死体が突然動きだし、研究員の喉を食い千切り殺害。死体は檻から脱走。目撃者の記憶はここで途切れている。
脱走した死体は三名の研究員を殺害したのち、警備員二名に銃殺。
四名の死者をだした死体を、我々は【Failure】と呼称する』


この建物で目覚めてから何度も見てきたもの。
日記に書かれているのは、あの化け物のことなのだろう。
ありえないと否定し続けていたことが現実のものとなってしまった。


不死の薬を作る過程で生み出された生ける死体。
それがあの化け物――――【Failure】の正体だったのだ。


(じゃあ、私たちが殺してきたのは、元は人間で……。それを殺した私たちは、人殺しってことになるのかな……)


だが、あれは正当防衛のようなものだ。
相手は言葉が通じない化け物。殺さなければ死ぬのはこちらだ。
仕方ないことなのだ。私も津山さんも悪くない。
悪いのは……こんなものを生み出した研究者たちなのだから。


(……化け物の名前より、建物の名前の方が知りたかったんだけどな……)


ため息をつき、ページをめくる。

 
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