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希望の果てにあるものは

第9章 日記


『失敗だ。この薬もダメだった。
死体は前回とは違い死亡直後に腐敗した。原因は未だ不明。
混入した薬品を確認してみるが、腐敗に繋がるような薬品はなかった。
死体は焼却。完成した檻に研究員を移し、五名に投薬。
数名の脱走者がいたそうだが、出口付近で捕らえられたそうだ。
研究所から出ても逃げられないってわかってるはずなのに。バカな人たち』


研究所から出ても逃げられないとはどういう意味なのだろう。
研究員の名前や住所がわかっているから逃げても無駄ということだろうか。
履歴書はどこで何をするにしても渡さなければいけないものだから。
あるいは漫画のように、ここは孤島にある研究所だからとか…………。


(……いやいやいや、ないない。あるわけないってそんなの)


漫画読みすぎてるのは私の方だったらしい。
孤島にある研究所だなんて、あるわけ……ない、とは言い切れないが。
仮にそうだったとしても、島ならば船くらいあるはずだ。
船の操縦をしたことがなくても、人間、追い詰められれば大抵のことはできる。
島という線は薄い。きっと個人情報を知られているから逃げられないのだろう。

ページをめくる。


(ここからまた似たようなことしか書いてないな……)


違う部分もいくつかある。
腐敗のスピードが遅いとか速いとか、体液が透明だとか緑だとか。
けど、結果は全て失敗。多くの人間があっという間に犠牲になっていく。
こんな実験になんの意味があるというのだろう。
不死になる薬だなんてくだらないものを作るために殺される人たちが可哀想だ。

日記を書いた研究者の精神が徐々に壊れていくのがわかる。
最初は死んでいったモルモットや研究員たちに罪悪感を感じていた研究者。
だが、人を殺しすぎて、感覚が麻痺してしまったのだろう。
途中から謝罪の言葉は一切なくなった。
あるのは、死後変化の記述と『失敗』という言葉のみ。
読み進めるごとに気分が悪くなっていく。今すぐこの日記を燃やしたい。

そう願っても、ページをめくる手は止まらないわけだが。

 
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