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希望の果てにあるものは

第8章 二人


「離せ! 早く行かないと蒼が……!」

「落ち着いて」

「うるさいっ!! 離さないと殺すぞ!」

「ダメだよ、殺すなんて言ったら」


妨害されて怒り狂う女と、こんな状況でも変わらずのんびりとしたシロ。
たしかにシロの言葉は正しいが、女はそれどころじゃないのだろう。


「このっ……はな、せ!」


力では敵わないと悟ったのか、女はシロの足を思いっきり踏みつけた。
痛みで顔を歪めるシロ。かなり痛かったのか、目には涙がにじんでいる。
女は痛みで力が抜けたシロの手を振り払い、走り出そうとする。

……一瞬で、頭に血が上った。


「テメェ!!」

「きゃっ……!」


女の胸ぐらを掴み上げる。

こいつはシロを傷つけた。
きっと篠塚を追いかけたかっただろうに、オレを一人にできないと、オレが寂しい思いをさせないようにと、残ってくれたシロを。
この女が何者かなんてもうどうでもいい。
こいつを生かす理由はない。オレの手で殺してやる……!


「――――透」

「……シロ……」


オレは本気でこいつを殺すつもりだった。
だが、シロがオレを呼んだ瞬間、強い殺意が一瞬で薄れる。
シロはオレを咎めるような目で見ていた。殺すな、と言いたいのだろう。

シロがこいつを許すのなら、オレが危害を加える必要はない。
オレは手を離した。女はその場にへたり込んだ。
心なしか震えているように見える。……殺されかけたのだ、無理もない。


「はっ、はぁっ……」

「透。ごめんなさいは」


じっとオレを見るシロ。
こいつのことだ、オレが謝るまで折れないだろう。
悪いなんて少しも思っていないが、仕方なく「悪かった」と謝罪する。
気持ちのこもっていない言葉だけの謝罪だが、シロは満足そうに頷いた。

……甘いのかバカなのか、なんなんだろうな。

 
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