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希望の果てにあるものは

第8章 二人


【津山視点】


「蒼――――?」


女を見つめるシロが呟いたのは篠塚の名前。
なぜここであいつの名を口にしたのだと尋ねようとしたが――――


「蒼? 今、蒼って言った?」


オレが口を開く前に女がシロにそう問いかけた。
驚いているのか、女は細めていた目を大きく見開いている。


「まさか……いや、でも……」

「おまえ、蒼を……『篠塚蒼』を知ってるのか?」


恐る恐る尋ねると、女の顔がぐしゃりと歪む。
まるでこの世の終わりを見たかのような、絶望に染まった顔。
女はだらりと力なく腕を下ろした。手から銃が滑り落ちる。
今なら床に置いた武器を持って逃げられるのでは、と思ったが、そんなオレの考えに気づいたのか、シロは腕を掴んでオレの動きを止めた。
なぜ止めるんだと目で訴えるが、シロは何も言わない。


「……アンタたちが蒼のこと知ってるってことは、蒼もここに……この建物のどこかにいるってことよね……」

「……? おまえ、篠塚の知り合いか?」

「蒼はどこ。ここにいないってことは、会ったけど別れたってことでしょ。最後に蒼を見たのはどこ。早く教えて!」

「無視かよ……。この先にある角を左に曲がったところだが……」

「蒼っ!」


オレが指差した方向へ走り出す女。
女はさっき持っていた銃以外に武器は持っていないように見える。
自分が丸腰だと気づいていない……いや、恐らく篠塚のことで頭が一杯になり、他のことに気が回らないのだろう。

女と篠塚の関係はわからない。
だが少なくとも、女にとって篠塚は自分の命よりも大事な人間なのだろう。
あれだけ必死な顔をしているのを見れば、誰だってわかる。

そんな、一秒でも早く篠塚の元へ向かおうとする女の腕を、シロは掴んだ。


「……は?」


何やってるんだ、こいつは。

 
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